ボルダリングって流行ってますよね。
カラフルなボルダリングの石「ホールド」が設置されているのを、よく見かけるようになりました。
そこで気になるのが、東京オリンピックで新しく起用された「スポーツクライミング」。
スポーツクライミングとボルダリングの違いってなんだろう?
と不思議に思ったことはありませんか?
そこでスポーツクライミングとはどんな競技で、採点方法やルールで日程や会場などを調べてみました。
「スポーツクライミング」のルールを知って皆で応援しましょう!
スポーツクライミングとボルダリングの違いは?
スポーツクライミングとは、さまざまな形の突起がついた壁を、両手両足ほ使ってよじ登るアレです。
みなさんもいろいろな機会に目にしたことがあるでしょう。
ところで、「アレのことは確か、ボルダリングと呼ぶんじゃなかったっけ?」と疑問に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
スポーツクライミングとボルダリングとは、どのように区分けされるものなのでしょうか。
まずはこの、呼び名に関することから話を始めていくことにしましょう。
スポーツクライミングとは
スポーツクライミングとは、
ホールドと呼ばれる突起物のついた人工壁を登攀し、その技術やスピード、高さを競う競技です。
もともとは自然の岩場での挑戦に端を発しますが、その技術が磨き抜かれるうちに愛好者も増え、スポーツの種目として競われるようになったのです。
その歴史は新しく、1989年に開催されたワールドカップが最初の正式な国際大会です。
その後ヨーロッパを中心に急速に発展し、1991年からは世界選手権が行われるようになりました。
そしてついに、東京オリンピックで追加種目として実施されることになったのです。
ボルダリングとは
ボルダリングとは、滑り止めのチョークと専用のシューズのみという、最低限の装備で自然の岩や人工の壁を登ることをいいます。
ボルダリング(bouldering)とは岩のかたまりを意味するboulderから派生した言葉です。
ロープのような補助具を用いないので、落下に備えてクラッシュパッドという携帯式のマットを下に敷いておきます。
スポーツクライミングの種目としてのボルダリング
スポーツクライミングには、「スピード」「ボルダリング」「リード」の3つの種目があります。
そう、ボルダリングは、スポーツクライミングの種目の一つでもあるのです。
ボルダリングには自然の岩場での登攀も含まれるのですが、スポーツクライミングの種目としてのボルダリングではもちろんホールドのついた人工壁を用います。
道具を使わない手軽さもあってか、日本では特にこのボルダリングが盛んで、スポーツクライミングの国内のトップ選手にもボルダリングを得意とする選手が多くいます。
クライミングができる設備の整ったスポーツジムでも、「ボルダリングジム」と銘打っていることが多いですよね。
日本ではボルダリングが登攀(とうはん)系の競技全般の総称のように受け取られている気配がなくもありませんが、このオリンピックを機にそうした認識もあらためられていくことになるのかもしれませんね。
【東京オリンピック】スポーツクライミングの日程や会場は?
東京オリンピックのスポーツクライミング競技は、8月3日(火)から6日(金)にかけての4日間、男子予選、女子予選、男子決勝、女子決勝の順に行われます。
時間はいずれも17時30分から22時20分を予定していますので、平日ですが観戦しやすい日程といえるかもしれません。
会場は青海アーバンスポーツパークです。
東京臨海副都心の一部をなす江東区青海地区に位置し、スポーツクライミングのほかにバスケットボール3×3も行われます。
【東京オリンピック】スポーツクライミングのルールを紹介
東京オリンピックのスポーツクライミング競技で行われるのは、3つの種目「スピード」「ボルダリング」「リード」のすべてを行い、その総合点によって順位を競う「複合」です。
まずは、これら3つの種目それぞれについて、どのようなものか見ていくことにしましょう。
スピード
スピードは、一つの壁に設定された2本のルートを2人の選手が同時に登り、その速さを競う種目です。
壁は95度に前傾、つまり垂直ではなく、登ろうとするこちら側に少し傾いているのです。
この壁を、選手たちはホールド(突起物)を手がかり、足がかりに登っていきます。
ゴールは高さ15メートルの位置にあり、そこに設置されたスイッチに先に触れた方の選手が勝ちということになります。
選手たちは落下に備えてロープのつながったハーネスを装着し、ロープの一端はゴール地点にある支点に固定されています。
ルートは公平のため2本がまったく同一に設定されているのはもちろんですが、実はこのルート、すべての大会において同一のものが用いられているのです。
長年にわたってどの大会でもホールドがまったく同一に配置されたルートで競技が行われてきたのですから、最適な攻略の方法はすでに確立されていて、選手たちは熟知したルートを入念に準備してきた方法にしたがって登っていきます。
その熟達さには目をみはるばかりで、世界記録は男子が5秒48、女子が6秒96です。
ボルダリング
ボルダリングは、高さ3〜5メートルの壁に複数の課題(コース)が設定され、登りきった課題の多さを競う種目です。
課題ごとに4分の制限時間があり、時間内にトップ(最上部)のホールドを両手でつかめばその課題はクリアです。
これを「完登」といいます。
ボルダリングは完登の数を競うのです。
各課題の途中にはゾーンと呼ばれるホールドが設けられていて、それをつかむことにより獲得が認められます。
完登数で並んだ場合、ゾーン獲得数の多い選手が上位になります。
一つ一つの登攀を「アテンプト」といい、失敗しても時間内であれば何度でもアテンプトできますが、完登数とゾーン獲得数が同じ場合、アテンプト数が少ない選手が上位になります。
スピードやリードと異なり、選手たちはロープなどを装備しませんので、代わりに落下に備えてクラッシュパッドを使用します。
スピードとは異なり、大会ごと課題ごとに違うルートを、選手たちは両手両足だけで登っていかなければなりません。
設置されたホールドには指先しかかからない小さなものから、両手でも抱えきれないほど大きなものまで、多種多様にあります。
そうしたルートを攻略するには、技術や体力はもちろん、知力も要求されます。
スポーツクライミングは知力を競い合う競技でもあるんですね。
リード
リードは高さ12メートル以上の壁に設けられたルートを、制限時間の6分以内にどの高さまで登れたかを競う種目です。
選手たちはロープのつながったハーネスを装着し、途中のクイックドローと呼ばれる支点にロープをクリップすることによって安全を確保しながら登り、最後のクイックドローにクリップすると完登となります。
途中で落ちてしまった場合はその地点が記録となり、再挑戦はできません。
完登した選手が複数いる場合、あるいは同じ高さまで登った選手が複数いる場合には、カウントバック、すなわち前ラウンドの順位の高かった選手が優先される仕組みが適用されます。
それでも差がつかない場合には、そこに到達するまでに擁した時間の短い選手が上位になります。
ボルダリングとリードでは、選手たちは他の選手が登る様子を見ることができないように、アイソレーションエリアと呼ばれる隔離場所で待機させられます。
先に登った選手の実施を見ることは、ルートを攻略する上でのヒントになってしまうため、公平性を期してこのように定められているのです。
知力を競う競技としての特性がよく表れた決まりですね。
複合
スポーツクライミングには以上3つの個別種目に加え、これら3種目をすべて行って総合点を競う「複合」という種目があります。
今回のオリンピックで実施されるのはこの複合です。
複合では各種目の順位を掛け算し、その結果が少ない選手が上位になります。
足し算ではなく掛け算をするのが他の競技ではあまり見られない、スポーツクライミングの複合ならではの特徴になります。
上位になるためにはどれか一つ得意種目があり、他の種目でもそこそこの結果を残すことが必要になります。
スポーツクライミングでは3種目すべてでトップクラスの実力を持つ選手はほぼいません。
陸上競技の短距離走のような瞬発力が求められるスピードと、大会ごとに異なるルート設定を攻略するための技術が必要なボルダリングやリードでは、競技の性格がかなり異なります。
その中で総合的な強さを発揮しなければならないのが複合競技の過酷さで、ここで勝てる選手は真のクライミングの王者ということになるでしょう。
【東京オリンピック】スポーツクライミングで注目選手は?
今回のオリンピックに日本代表として出場するのは、男子が楢崎智亜選手と原田海選手、女子が野口啓代選手と野中生萌選手です。
いずれもボルダリングを得意とする選手たちです。
4人とも世界のトップクラスの実力の持ち主ですが、ここでは男子の楢崎智亜(ならさき ともあ)選手に注目してみたいと思います。
楢崎智亜選手
この投稿をInstagramで見る
楢崎選手は1996年生まれの25歳、幼いころに習っていた体操でつちかった身体感覚を生かし、しなやかでバネの効いた動きで「ニンジャ」の異名をとる世界のトップ選手です。
プロ転向2年目の2016年にはワールドカップのボルダリング種目で総合優勝、世界選手権のボルダリングでも金メダルを獲得しました。
もともと得意としていたボルダリングに加えてスピードでも力をつけ、2019年にはホールドのボルダリングで再び総合優勝を遂げるとともに、世界選手権の複合でも金メダルを獲得しました。
スピードの苦手意識を克服する上でポイントになったのは、独自に編み出した「トモアスキップ」と呼ばれる登り方です。
楢崎選手は持ち前の身体感覚を生かして、3番と4番のホールドを飛ばして5番ホールドをつかみにいくスタイルを確立し、記録を大幅に縮めました。
今では世界でも多くの選手がこのトモアスキップを採り入れるようになっています。
「このオリンピックで活躍することは僕の使命。初代チャンピオンをねらいたい」と意気込む楢崎選手がどんなパフォーマンスを見せてくれるのか、楽しみでワクワクしますね。
まとめ
以上、オリンピックの追加種目として実施される新競技スポーツクライミングについてご説明してきました。
クライミングについて漠然としたイメージはあったけど、競技の詳しいことについてはご存知ないという方も多かったのではないでしょうか。
この記事を観戦の手引きとしつつ、より深く競技を楽しんでいただければ幸いです。
コメント